1月21日夜、熊本の前田先生をお招きして、私の著書出版記念オンラインセミナーでお話をする機会をいただきました。
前田先生は弊社かんがえるを起こした頃、熊本からオンラインで研修をご依頼くださり、本当にお世話になった先生です。
当時プログラミングでアートを楽しんだり、デジタル音楽を体験するワークショップをオンラインで開催しておりましたが、それをご依頼いただけて、たくさんの先生にご参加いただきました。前田先生のお力と、熊本の先生方の高いモチベーションに勇気をたくさんいただきました。
前田先生は漫画を描かれることでも有名ですが、ご著書の中でも初めて手にしたのは「まんがで知る教師の学び」でした。https://amzn.asia/d/cpU1q56

前田先生のご著書は教育ICTに、それこそ「なんか変だな」「これで良いのだろうか」とモヤモヤしていた自分にひとつの回答をくださいました。
私が今こうして教育ICTの世界で頑張り続けられるのは、これまでに出会った何人かの素晴らしい先生の「未来を見つめる姿」があったからです。
セミナーで、私からのお話は、学校ICTの変なところというより、まずICT支援員のお仕事は、自治体が目指す姿を共有してはじめて明確になるというテーマからになりました。
配布資料には支援員あるあるを載せましたが、私が伝えたいのは、私たちも学校を思う1人として未来を見つめる先生の輪に入りたいということを伝えたかったのです。
自治体の目指す姿が示されていない、示されていても、皆が腹落ちしていない、具体的な短期目標がない場合、ICT支援員の契約者である部署の指導主事や教育委員会の方ですら、ICT支援員に何をしてほしいが言えなかったりします。
導入しても関心なし。委託したんだからよろしくという感じで、話し合いにも参加しないと言ったケースも見受けられます。せめて管理者が聞き取りをしてくれたり担当した学校の管理職には目標があるなら、ICT支援員は暗中模索にならずに済みます。そうでなければ真っ暗闇のなで手探りで自分の存在意義を探さなくてはならなくなります。
ましてや、いまだにICTは不要、端末は子どもの能力を下げる、インターネットは誘惑が多いと子供からICTを遠ざけたいような意見は後をたたないので、学校が一丸となっていないなら、運がよければニーズと自分のスキルがマッチしますが、ほぼ長く続きません。
目的もわからず、この職業の意味や価値もわからない状態では、学校に訪問しても仲間はずれのようになります。忙しいから誰も話しかけません。早い流れの川岸でメダカをすくうみたいになります。ひとりぼっちで、立ち竦むことになるでしょう。
文科省のアドバイザーになって、全国のICT支援員さんに会う機会をいただき、そこではっきりわかったのは、ICT支援員さんのICT活用能力が高くても、こちら側だけが足掻いているだけでは、成果が出ない仕事なのだということです。しかし、昨日の前田先生のお話は、私が聞きたかった「先生方全てが、学ばなくてはいけない」という力強いお言葉でした。
ICT支援員は学校に対して個別最適なる支援をしなくてはなりませんが、その支援は「個別」が「個性だからできないのは仕方ない」と読み替えられて強調されてはいけないと思っています。確かに環境は自治体ごとに違います。できること、使えるものが違います。先生方のICTスキルはGIGA以降もっと広がりました。でも、それはICTにおいての話で、授業力、指導力などにおいてもそもそも大きな差があったと思っています。
それは「ICTの操作能力」や「ICT分野の知識量」とは別です。それは支援員として普段の授業を見ているからわかります。同じ学年の同じ単元なのに、切り口がかなり違ったり、子どもたちの様子も大きく異なるのです。それぞれがその単元で子供が獲得する力を考えて授業をデザインされるのだと思いますが、そこには先生の力差が見えます。同じ授業支援システムやプレゼンテーションアプリを使っていてもそのツールの存在意義が全く違う。
私は教員ではないですが、たくさんの授業を見続けて、先生によってICTの効果に違いがあることが、子供たちの様子でわかることがあります。
自称ICTは苦手という先生でも、授業でのICT活用にハッとするようなアイデアをお持ちの先生とたくさん出会いました。
学習者の立場で授業を見て、そのアイデアの素晴らしさを先生とお話しができた時は、最高の喜びを感じます。
そこには共通して「子供たちに大切なことを伝えたい、子供たちに多くの経験をしてほしい、子供たちの意欲を高めたい」という意思を感じ、使命感を感じました。
先生がそのようなモチベーションを目の前の子供達に向けて保ち続けられる、周りの先生とも話し合える、共感しあったり、時には議論するような学校には、そこに強い目標があります。だから先生方はそれを道標に自ら進もうとする意欲を持てるのだと思います。
今回、前田先生がご提示してくださった、「ここが変だよ学校ICT」は、どれも「あ!だからなんかモヤモヤするのか」と自分のモヤモヤを的確に言語化していただいたようなものばかりでした。
そして、その裏側にある、さまざまな私が知らない教育用語が示され、その意味と共にものすごくICTの価値、子供たちに経験してほしい学びを一気に「インストール」されたような気がしました。

実は昨年末大分のある自治体に訪問したのですが、ここでも校長先生の強いリーダーシップと、各先生方の素晴らしい授業の中で、ICT支援員さんは間違いなくそこで、共に新しい学びに挑戦する仲間として存在していました。
「熊本のICT支援員さんは素晴らしい」という前田先生のお言葉に、自分のことのように嬉しさとICT支援員の存在価値を確信しました。
昨年は鹿児島のICT支援員さんを取材して、EDIXでお話をしましたが、
今年は熊本のICT支援員さんを取材できたら良いなと思います。
最後ですが、私の著書である「ICT支援員という仕事」ぜひ全国の教育委員会の皆様にもお読みいただければ幸いです。

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