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アートとICTについて図工と美術の先生方にお話ししてきました。

執筆者の写真: かんがえる社長かんがえる社長

【アートとICT】

先日長野市の小学校で行われた美術の先生の研修で、「アートとICT」をテーマにお話する機会をいただきました。私がICT支援員になる前の職業は、新卒で3年半ほどシステムのモジュールを作るSEでしたが、その後幼なじみの出版社の編集者に声をかけられて、商業イラストレーターとして、雑誌や書籍に絵を描く仕事を長くやっていました。もともと絵を描く仕事につきたかったので、夢を叶えて絵でお金をいただける仕事をしていました。今もデザインの仕事は時々やっています。


大学も紆余曲折あって工学部に入りましたが、高校2年までは美大を受けるつもりでした。

そう言った意味ではアートの分野に片足を突っ込んだ人間なので、この分野には特別な思いがあり、今回のご依頼はとても嬉しいものでした。

余談ですが普段私はある幼稚園に毎月訪問して幼児教育とICTについても推進していますが、そこでは、基本的にリテラシー以外に、デジタルアートやプログラミング、デジタル音楽のワークショップを毎年行っています。


今回は美術分野でしたが、音楽やゲームという話題に対しても、私の話を興味を持ってお聞きいただき、一緒に端末で綺麗な模様を作っていただいた時も、どの先生もとても楽しそうに取り組んでくださり、デジタルの可能性を再認識できました。

しかし、美術や図工の専科の先生とお話しして感じたのは、デジタルと相性が良い教科でありながら、デジタルツールでお絵描きを本格的にやったことがある方が意外と少ないことです。これは音楽も同じでした。これまでのツールを変えず、授業の補助として、作品の完成までの補助としてICTを使うことはあっても、デジタルでクリエイトする部分にはあまり触れられていないのかもしれないと感じました。


【ビジネスとしてクリエイトすること】

私の3人の娘のうち2人はプロのイラストレーターですが、3人とも絵を描きます。そして3人とも画材はMacとiPadとApple Pencil。アプリやガジェットはその時で色々使っているようです。そして、絵を描くツールには、アナログではできないことがとてもたくさんありますし、逆にこのツールでお絵描きをすることが日常の人間にとっては、それが当たり前の機能なのです。その中でも1番誰にでもわかりやすいのはUndo(取り消し)ではないでしょうか。今描いた線を取り消す機能は、古いデジタル絵描きの私の時代でも左手は常にCtrl+Zに手を置いて描いていました。慣れてくるとアナログで描いていても左手が無意識にUndoを探してしまうくらいでした。

そしてもう一つきっと使っていない人もわかるだろうと思うのはコピーペーストの機能です。

何回も同じものを描く必要はなく、全く同じものを作ることは手ではなかなか難しいものです。描いたものの位置を少しずらしたいという時もこの機能で移動ができます。


今はさまざまなサポート機能がデジタルによる絵描きを支えています。そしてそれが当たり前です。でもこれを本当に日常的に体験している先生は少ないかもしれません。

線画も補正ができて誰でも美しい円がかけたり、手ブレが補正できたり(しかも強度は自分で変えられる)レイヤーという機能があるおかげでさまざまなメリットがありますし、レイヤーはただ書くものを分けているだけでなく、合成という機能を使いこなしていくと様々な効果を生み出せます。この辺りの技術はデジタル絵描きには常識と言っても良いでしょう。


【本当に必要なデジタルスキル】

ただ、デジタル絵描きにとっても仕事としてやるには、ICTの知識は必要です。アナログとデジタルの間にある大きな壁が色です。デジタルで絵を描きデジタルで見せる、アナログで描きアナログで見せる場合は気にすることのないことに、これをまたごうとすると気づきます。

例えば今回私の単著を書くにあたり、イラストを長女に依頼しました。彼女は普段デジタルで絵を描き、Webサイトやネットニュース、webコマーシャルなどに使われていますが、今回は初めて紙媒体に自分の絵が使われることになりました。そこで、必要になったのは、「2色刷り」にするための「色分解」でした。元の絵をC(シアン)とK(ブラック)のみで描かないといけません。これは紙で印刷するときには、カラーは4色で印刷されるので、それぞれの色に分解しなくてはいけないのです。今まで余り意識したことがなかった作業だったので、とても勉強になったと言っていました。逆もありまして、アナログの絵をデジタルにするのにも、様々なハードルがあります。ただスキャンすれば良いわけではないのです。この辺りは印刷屋さんや画像を加工する人たちの技術や知識が必要になります。実は今世の中に出回っている多くのコンテンツ、製品にはアナログとデジタルをつなぐ様々な技術が必須なのです。社会の常識になっている、商業イラストレーション、商業音楽という分野においては、これらを職業としたいと思う子供達には避けては通れない技術なのです。そしてこれは、今学校で語られる「ICTリテラシー」とは少し違う分野に広がる知識です。つまり絵であれば色と光の知識、解像度の知識、ベクターデータの知識などです。


ICT活用はシンプルに今あるツールを置き換えるのが第一段階のように思われていますが、実はそうではないと私は思っています。置き換えるまでにいたっていないものがとても多いのです。

置き換えることにメリットを感じられるような置き換えではなく、いままでの活動をただ端末上で行うために、人間がICTに合わせてあげる、人間ほどはできないけど、下書きや検討段階のような使い方です。これではICT活用はメリットを感じていただけないでしょう。手間がかかる上に、アナログより精度が落ちるならただの置き換えは面倒や負担はあっても喜びはありません。

機械を触ってみる初めての興奮はあったとしても、それは一度きりであっという間に冷めますから。


こうした意味で実技教科、特にアートの分野ではまだまだデジタルはできることがものすごくあるのに、取り入れられていない状況です。個人的には、デジタル絵描きを招いて子供達に直接デジタルで絵を描くこと、デザインなどをすることを教える研修などがあるとよいのではと思ったりします。そこに「テンプレートですぐできる」は不要です。粘土のようにデジタルデータを自在に扱えるスキルは、事務処理や決まったことを全てAIがやってしまうかもしれない、これからの時代に間違いなく必要なスキルになるでしょう。


ただコンピュータに作業させるためのリテラシーだけでなく、人間らしくクリエイトするスキルを身につけるために、基礎からさまざまなことを学ぶ機会があるといいなあと感じた次第です。

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