デジタルとリアル、その間にある大切なこと
- 9月27日
- 読了時間: 4分
―ICTを愛する者として伝えたいこと―
私たちは今、ICTによって、どこにいても世界の知識や映像にアクセスできる時代を生きています。VRで遠い国を旅したり、写真や動画で歴史的な出来事を学んだりすることは、かつては夢のような体験でした。ICTを愛し、その可能性を信じる立場から見ても、これらの進歩は教育や人生を大きく広げる力を持っています。
しかし同時に、忘れてはならないことがあります。
それは、デジタルの体験とリアルの体験の間には大きな乖離があること、そして生成AIの“答え”が子どもの探究の芽を摘んでしまう危険性があるということです。
生成AIが子どもの学びに蓋をする危険性
子どもは、自然や身近な世界にある「ちょっとした違い」に敏感です。その気づきは新しい発見の出発点になるかもしれません。ところが、大人が生成AIに尋ね、「これは〇〇です」とラベルを貼ってしまうと、子どもの違和感や探究心が出来合いの「正解」によって押しつぶされることがあります。
生成AIは今存在しているものの断片から答えを作ります。それはものによっては新たな発見の手助けになるかもしれませんが、安易に答えを求めたときに、本当に正しいか?を疑う気持ちがないと、既存の情報を変える新しいものにきづけないかもしれないと心配になるのです。
世の中にはまだ私たちの知らないことが山ほどあって、特に自然界にはまだまだ発見されていないものがあるはずなのです。
学びの本質は「気づき」「疑問」「検証」のプロセスにあります。AIが便利だからといって「すぐに答えを与える装置」にしてしまうと、子どもが本来持っている学びの力を奪ってしまうのです。
これは生成AIに限りませんが子供に与える大人の知識は強い価値観を植え付けていきます。
興味を持ったものがくだらない価値のないものかどうかも、大人の態度から判断していくでしょう。
デジタル体験の素晴らしさ
もちろんICTが与えてくれる恩恵は計り知れません。
行けない場所に行ける
見られない現象を観察できる
知識や経験を短時間で疑似的に得られる
教育においても、子どもたちが宇宙の果てや深海の奥をVRで探検できることは、間違いなく想像力を広げるきっかけになります。
リアル体験の圧倒的な情報量
けれども、現実世界で体験する情報量は、デジタルをはるかに超えます。
私はコロナ禍で長く外出を控えたあと、1年ぶりに山奥へドライブに行ったときに強烈に感じました。
目で見る緑の深さ、耳に届く川のせせらぎ、鼻に入る土や草の匂い、肌に触れるひんやりした風…。それらが一度に押し寄せてきたとき、「ああ、人間の感覚が受け取る世界は、こんなに豊かだったのか」と驚愕しました。
目に入る情報があまりに鮮明で美しくて強烈で、そしてその量に頭がくらくらしたくらいです。
どんなに高精細な映像や音声でも、現実の体験には及びません。なぜなら、デジタルは必ず「誰かが切り取ったフィルター」を通した情報だからです。編集された一部の視点であり、「全体の世界そのもの」ではありません。
もちろん私が一応まだ健康な目や耳や鼻、手足が動くことで得られていることは忘れていません。
この先歳をとって目が見えづらくなったりしたときにデジタルは私を救ってくれて鮮明な世界を見せてくれるかもしれない期待はあります。
一方でリアルの情報量は素晴らしいですが、どこにフォーカスして良いかわからないほどの情報量をデジタル技術はうまく整理してくれます。注目したいものをフィルターにかけて浮き上がらせることは、学習の目的によってはとても効果的なことだと思います。
ICT活用における重要なポイント
ICTを活用する上で大切なのは、「リアルを置き換えるものではなく、リアルを拡張するもの」と位置づけることです。
生成AIの答えを「終点」にせず、「問いを広げる入口」とする
デジタルは学びの補助や比較材料として活用する
リアルの体験こそが、学びや記憶の核になる
両者をつなぐ設計をすることで、教育の価値が高まる
ICTを愛するからこそ、私は「リアルの体験の尊さ」を軽んじてはいけないと思うのです。
大人にだってまだ知らないことが山ほどあって、こどもは私たちより先にそれを手に入れるかもしれません。私たちがいなくなった未来でも彼らは生きていくのです。
このブログを読んでくださった方へ
あなたが最近「デジタルでは得られない」と感じた体験は何でしょうか?
逆に「デジタルがあったからこそ開けた新しい世界」はどんなものだったでしょうか?
そして、子どもたちにAIを使わせるとき、「答えを与える」のではなく「気づきを深める」方向に導く工夫はできそうでしょうか?
結びに
ICTはこれからも進化し続け、私たちの生活を便利にし、教育を豊かにしてくれるでしょう。
けれど、その中で「リアルでしか得られないもの」と「子ども自身の気づきを育むこと」を忘れないこと。
その視点を持つことが、これからのICT活用の最大のポイントだと、私は信じています。







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